木造の美容学校
たまたま通りかかった道路沿いに、一軒の廃屋があった。
立派な構えと廃墟らしい崩壊っぷりに魅かれ、入ってみることにした。
すると、簡単に入れそうで意外に入れない。
屋根も落ちかけてこんな状態になっているにも拘らず、入り口は施錠されている。
隣の建物との僅かな隙間から、奥へと進む。
途中、部屋を覗き込む。
勝手口はオープン、というより崩壊していたたため、ここからお邪魔した。
これは、時代劇でよく出てくるキセル置きじゃないだろうか。
パーマをあてる時に髪の毛に巻く、通称クルクルを発見。
どうやら、ただの民家ではなかったようだ。
あまり信用できない階段で、恐る恐る2階に上がる。
2階には、たくさんの部屋があった。
一部、屋根が崩れ落ちている。
2回の壁と床も全体的に歪んでおり、いつ倒壊してもおかしくないだろう。
今倒壊したら、あまりにも運が悪かったと思うより仕方ない。
第十六号室。
どう見ても、そんなにたくさんの部屋は無い。
どうやら、この建物でだけではなく、棟続きの建物も同じ所有だったらしい。
他の残留物等から、ここは寮制の美容学校だったようだ。
純和風民家の専門学校というのも珍しいのではないだろうか。
寮長部屋らしき場所には、生活感あふれる残留物が多数あった。
ここで生活していて、ある日突然姿を消してしまったように感じる。
この廃屋のすぐそばでは道路工事が行われていた。
道路の拡幅・付け替え工事で、これによって取り壊されるんじゃないかと危惧していた。
取り壊しは免れたものの、主要道路に直接面するようになってしまった。
取り壊されるのが先か、自然崩壊が先か・・・そんな廃屋だった。