食品工場


この日、早朝から2件の廃寺を探索して岐路についていると、廃な雰囲気を発している建物を発見。
Uターンして近づいてみると、工場の廃墟だった。




外観からすると、まずますの規模。



幾つもの建屋が左右に連なっている。



最も手前の建屋に入ってみた。中はガランとしていて、殆どの物が持ち出されていた。



その中で目を引いたのが、樽だ。



巨大な樽が、ポツンと放置されている。
どうやら、ここは発酵食品を製造する工場だったようだ。



樽の脇にある製造事務所らしき場所には、書類等が放置されていて、この廃墟内で数少ない残留物となっている。



原料の単価が書かれたホワイトボードにも、値上げの波が。



ここで製造されていたのは、醤油と味噌のようだ。



続いて、別の建物にも入ってみた。
先ほどのガランとした内部とは打って変わって、四角く区切られたコンクリートのプールが並んでいた。



肉眼では真っ暗で見えないプールの底には、カビた大量の味噌が・・・
建物内全体に強烈な腐った味噌の香りが漂っている。
あまりの臭気に早々に立ち去った。



他の複数の建物も、残留物は樽ぐらいしか残っていない。



木の樽で仕込まれた醤油、一度賞味してみたかった。



ちょうど近所の方が通りがかったので、話を聞いてみた。
“本物”にこだわった醤油と味噌を製造していたが、安い外国産の大豆を使った国産醤油・味噌に押されて経営が悪化、ついに倒産したという。
かつては本社も近くにあり、地域に根ざした食品メーカーで、ファンは全国にいたようだ。
本物を作り続けていた地元企業が廃墟になってしまった様子を見ていると、残念でならない。

景気が悪い昨今、高品質高価格商品には厳しい状況が続いている。
高品質を維持して安売りを拒否したために倒産したり、逆に過度の低価格競争によって廃業に追い込まれたり、さらには詐欺まがいの商取引の末に夜逃げをしたりと、廃墟には色々な背景がある。
それによって廃墟に込められている人々の思いというのは、全く違ってくる。
廃墟の背景を読み解き、去って行った人々に思いを馳せるというのは、私にとって廃墟探索の最大の楽しみでもある。