明延鉱山 2/2
選鉱場の上部にやって来た。
冬の早朝だったため、雪が残り氷が張っている。
インクラインを上から見下ろす。
手作り感あふれる警告表示。
実際には、一円電車の乗客はたいてい乗れていたようだ。
上部の軌道は、荒れるに任されていた。
内部も崩落。
山を奥のほうへ歩いていくと、古い時代のシックナーがぽつんと佇んでいた。
巨大なズリ山。帰りはこの斜面を転がるように下ってきた。
これは、公式見学会に参加した時のもの。
普段は入ることのできないシックナーの下を見学できる。
錫を振動で選鉱する独特な仕組みについて解説が聞ける。
一部ではあるが、機械類も残っている。
鉱山らしさをかんじさせる階段。
選鉱の制御装置が!
これが見られただけでも岐阜から来た甲斐があったというもの。
ここ明延鉱山は「産業遺産としての廃墟」を強く印象付ける場所だった。
廃墟という趣味を続けていると、必ずどこかで飽きてくる。
そうした時に、趣味をやめてしまう人がほとんどだが、私のようにしぶとく続ける人も少数ながらいる。
壁にぶつかっていた2008年、廃墟趣味の行き着く一つの可能性が、産業遺産だと思った。
当時、八画文化会館の酒井さんが中心になって製作していた書籍に協力させてもらい、『廃墟という名の産業遺産』というタイトルを思いついた。
そして、しばらくは鉱山廃墟を中心に、産業遺産としての廃墟を意識するようになった。
しかし、長続きはしなかった。
ノーボーダーの廃墟と違って産業遺産は制約が多く、それに気づいたからだ。
つくづく自分は廃墟ポジションの人間なんだと再確認し、廃墟の視点から産業遺産を眺めることにした。
鉱山の気になったことは調べる。
そんな機械でどのように使われていたのか、鉱山では何を掘っていたのか、どのように掘っていたのか、採掘量や埋蔵量は?当時の町並みや人々の暮らしぶりは・・・
しかし、決して自分自身は介在しない。
貴重な廃墟が破壊されても、解体されても、観察しかしない。
逆に探索時には廃墟を傷めないように、十分注意する。
廃墟が廃墟として残るのも、自然に崩壊するのも、所有者に解体されるのも、訪問者に破壊されされるのも、全て廃墟の宿命だ。
宿命を受け入れ、ただ記録し、傍観者に徹する。
それが廃墟趣味者なのではないかと、今のところは思っている。
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