神岡鉱山 茂住鉱区'2006春 〜1〜
探索2日目、予報どおり雨が降っていた。
朝風呂に入って出発時刻を少し遅らせ、行きつけの喫茶店「あすなろ」でまったりしていると、雨が上がった。
そして、茂住で4人を待ち構えていたのは・・・
茂住に来るのは、久しぶりだった。といっても1年ぶりだが。
丘の中腹に選鉱等の施設が廃墟として残っているが、その奥には研究施設が出来ている。
そのため、結構車の出入りがある。今までにも、何度か目撃した。
だがここに入るには、正面突破してその道を数分間歩かなければならない。
隠れる場所が皆無で見通しの良い道だけに、かなりリスクを伴う。
我々が入る直前にも、四駆車が出てくるところだった。
あと数分早く来ていれば、確実に遭遇していた。
このあたりが施設の下部だが、まずは丘を最上部まで上って施設内を下る作戦にした。
ここが最上部だ。
すぐ奥が研究施設になっているため、長居は無用。
本題に入る前に、左手の軌道を軽く見るつもりだった。
ここは、トロッコに積まれた石を下に落とす場所だ。
その時、思いがけない事態が発生した!
突然ライトが点灯したのだ!
前回来た時の様子から考えても、どうやらここは生きている。
時間的に考えて、我々を発見してライトを点けたとは考えにくい。
とすれば、これからここで作業をするために点けたと考えられる。
つまり、間もなく作業員がやって来るということだ。
我々は、速やかに撤退を開始した。
いやー、びっくりした。しかし、これで本体の探索をやめる訳にはいかない。
気を取り直して、道路を挟んで反対側の施設の裏に回り込んだ。
眼下には、川にかかるボロボロの橋が見える。
前回と同じ入り口から入ろうとしたら、施錠されている。
本来なら、この時点で異常に気付くべきだったのだ。
もう一つの入り口を開け、くもの巣を払いのけながら踏み込む。
踏み込んだ矢先、中から電話の音が聞こえてくるではないか!
内線電話の音だった。我々は全員の携帯ではないことを確認し、撤退した。
現役施設から我々が見えて内線をかけてきたのか、全くの偶然だったのかは分からない。
しかし、ここが生きていて、常駐じゃないにしろ定期的に管理者が訪れることが推測できる。
今回ばかりは続行できない。早足で出口まで退却した。
この状況では、もう茂住は無理かとも考えたが、本丸を前に諦めたくは無い。
そこで私は、最後のとっておきの経路で乗り込むことを提案した。
以前、大津山鉱区を訪れた帰りに、偶然見つけた経路だ。
この経路を使うにはかなり抵抗があったが、とりあえず進んでみる。
川沿いの急峻な地形を削って造ったトロッコ軌道跡からは、茂住の様子がよく見える。
途中、完全にトンネル化してる箇所があり、真っ暗になる。
そのため、懐中電灯を持っていた。
コウモリが行ったり来たりしていた。
トンネルを抜けると、いよいよ問題の箇所に差し掛かる。
ここが、問題の箇所だ。
どうってことないように見えるが、これが最大の難所である。
そう、さっき眼下に見下ろしていたボロボロの橋を、渡るのである。
管を渡すためであって、決して人が通るためでは無いであろう橋を。
川は渓谷になっていて、落ちたらひとたまりも無いだろう。
これが、躊躇の理由だった。だから今まで一度も渡ったことは無い。
そこを今、渡っている。木板の間からは、下が見える。
下手なところを踏むと、「バキ」という音がする。
しっかりと手すりに掴まりながら、なるべく端の方を踏んで慎重に歩いた。
重量がかからないように一人ずつ渡り、何とか全員渡りきった。
これが渡ってきた橋。
落ちたら20mぐらいだろうか。
神岡鉱山 茂住鉱区'2006春 〜2〜