戦慄のエロ本小屋


この日は、朝から雨が降っていた。
前回の捜索から約半年、偶然近くを通りがかったため、立ち寄ってみた。
早朝に自宅を出発し、中津川の殺人事件以来厳重な警戒が続く東濃地方の廃墟を一人でパトロールしていたため、スーツを着ていた。
雨は小降りになったが、ジメジメとして嫌な感じがする。
ただでさえ、この一帯は暗い雰囲気が漂っているというのに、この天気がさらに拍車をかける。
そして、廃れた道の先に、本当の恐怖が待ち構えていた。






問題のエロ本小屋にほど近くなった頃、行く手を阻む木の枝が落ちている。
画像右上の枝が「折れた」ものだろう。と思い、難なくクリアして進む。
そして、間髪入れずにまた道路を横切る形で枝が落ちている。
いくら交通量が無いとはいえ、2度も続くことに少々戸惑いはあったが、この車なら止まらずに乗り越えられる。
後になって、これが「第一のゲート」「第二のゲート」であったことが分かるのだが。



エロ本小屋に到着する直前、今度はひどく木が倒れている。
これでは、車で通過することはできない。
すぐ近くなので、カメラを持って車を降り、木を乗り越えた。
これが「第三のゲート」だとも知らずに。
その時・・・



これ倒木じゃなくて切られてるよ!!
道路に倒れていると思っていた木は、人為的に倒されていたのだ。



複数の木が倒され、来る者を阻んでいる。
倒したい方向の反対側からナタを入れ、一撃で仕留めている。
ナタの扱いに慣れた者の仕業ではないか。
ガキの出来る仕事じゃ無いことは確かだろう。



エロ本小屋を挟んで反対側の道路上にも、進入を阻むべく丸太が置かれている。
それは、バリケードを築いた理由がこのエロ本小屋にあることを示している。



ここは人里離れた森の中。恐る恐る小屋に近づく。
草の丈が伸びる時期にあって、はっきりと「道」が存在する。



小屋の軒下には、飲みかけのペットボトルが転がっていた。
もちろん、前回来た時には無かった品だ。



緊張感が高まる中、慎重に覗きこむ。



小屋の内部の様子も、随分と変わっていた。
畳は剥がされて、立て掛けてあった。
そして、前回発見した白色のショルダーバッグは消えていた。



床が抜けた状態になっている。
この小屋の「使用者」がわざとやったのだろうか。



エロ本の破片も、前回と来た時と入れ替わっているようだ。
とにかく、悠長に写真を撮ってられるような精神的な余裕は無かった。
「ここに居てはいけない」と、本能が命令を発しているかのようだった。
さっさと撮影して、小屋から離れた。1階を見ることも出来なかった。
小屋を覗き込んでいたのは、せいぜい30秒ぐらいだったと思う。



小屋の周囲には、スリッパや食料品のパックといった生活ゴミの投棄が目立つ。



真新しい缶コーヒーの空き缶。
長居は無用、そそくさと車に戻った。
車に戻ると、変な汗をたくさんかいていることに気付いた。


ここに着いてからというもの、常に周囲を警戒していた。
特に背後。生きた心地がしない。こんな廃墟は早々無い。
廃墟で最も怖いのは、幽霊でも落とし穴でも錆びた釘でもなく、人間。
それが、今までの探索で得た結論だ。この時も、そう強く感じた。
深夜に病院の廃墟や廃寺に一人行くよりも、昼間ここに一人でいることの方がずっと怖い。
ここには、リアルは恐怖が確かに存在している。