神の住む家 〜その3〜
たまらずストロボを使って撮影。
この家、竹の根っ子が侵食しまくっている。
とっても微妙な掘りごたつだった。
テーブルの上には、タバコが残されていた。
家全体が、自然に還りつつある。
外に出てきた。久々に見る太陽の日が眩しい。
表札にはフルネームが表記されていた。
この名前が、後々この廃屋の秘密を解く鍵に・・・。
入る時はまだ朝日が差す状態だったが、出てくると普通に日が昇っていた。
棟続きの隣の建物は崩壊し、一枚の壁だけが残る状態になっている。
帰りがけに、草木に埋もれている真新しい石碑を発見した。
達筆でよく読めないが最初の二文字は「神入」だろうか。
石碑の裏側には、建造者の氏名のほか、表札と同じ氏名が記されていた。
この廃屋のことがとても気になり、帰ってから色々と調べてみた。
あり得ない位置に存在していて、神社との関係が深そうだ。
まず、この神社だが、今から約1300年の奈良時代に、ある僧によって建立された。
その後、改築等もされたが、現在の社殿は江戸時代に建てられたものだという。
外観の重厚さは、この深い歴史からくるものだった。
そして、注目すべきは建立した僧の名前だった。
漢字二文字だが、その名前を見て「まさか」と思った。
一文字目が、あの廃屋の表札に出ていた名の一文字目と同じだったからだ。
人名漢字としては、そんなに多用されていない字だろう。
それが一致していること、神社と廃屋との位置関係、庭先にあった真新しい石碑・・・
全てが結びついた気がした。
これから先はあくまでも私の個人的な想像でしかないので、それを理解した上で判断してほしい。
恐らく廃屋の主は、神社の神主だろう。
それも1300年前に神社を建立した僧の血を受け継ぐ、直系の家系だった。
しかし平成の時代になって、後継がいなかったのか神主が若くして急死したのか、何らかの理由で家が絶えてしまった。
庭先の石碑にあった「神入」という文字は、この家の主が天に召されたことと、死後神になるという特別な存在であったことを意味している。
神社は現在、地域の人たちによって維持されているようだ。
神主の代わりは、近隣に住む一人の宮司さんが本業の合間を縫って務めているらしい。
歴史の深い神社だけに、今後の展開が気がかりだ。
そして、この廃屋がこれからも荒らされることなく、ひっそりと、ゆっくりと、自然に還ってゆくことを願っている。