化女沼レジャーランド 10/10
最後に、ここ化女沼レジャーランドに存在する温泉をご紹介したい。
この温泉を掘り当てたのは、閉園後の平成15年のことだった。
そのため、知っている人は限りなく少ない。
普段は止めている温泉を、わざわざ出していただいた。まずはセッティング。
勢いよく噴き出す水。最初は水で、徐々に温かくなってくる。硫黄の香りが漂いはじめる
湯気が出てきたので触ってみると、温かい。肌触りがスベスベしていて、独特のヌルミがある。
後日入ってみたが、とってもいい温泉だ。なめてみるととてもしょっぱかった。
温泉巡りをしている専門家に言わせても、成分・温度・湯量ともに文句のつけようが無い日本有数の良泉だ。
この温泉と、現在も警備が入っているホテルだけで再開発する道もあった。
しかし、かつてのレジャーランドのように、老若男女に愛される施設でありたい。
その思いから、後藤社長は温泉のみの売却を断った。
スマートICから数分という立地で、仙台から30分とかからない。
日本の温泉地は衰退傾向にあるが、これは改正温泉法で除外されるような微妙な温泉ではない。
渡り鳥の飛来地に隣接し、公有の自然公園に囲まれた唯一の私有地で、周囲の景観を破壊される心配がない。
それでいて、ここは元々遊園地やホテルがあったので、開発が許されている。
これは、使いようによってはうまくいくんじゃないかと思う。
岐阜から宮城まで遠征し、丸二日間かけて化女沼レジャーランドを見てきた。
後藤社長には長時間付き合って頂き、多くのお話を聞くことが出来た。
また、元従業員の方々にもお話を聞くことが出来た。
清掃活動が終了したあと本来なら解散するところ、場所を変えて昼食を摂りながら当時の様子を話してくれた。
当時を知る人の話は、どんな資料よりも興味深くて、面白い。
今回の廃墟探索の旅は、出会いの旅でもあった。
一人の男の夢で回り始めた観覧車は、10年前に停止し、錆付いている。
行政にも業界団体にも頼らず、一人の力で運営してきた自負がある。
出来ることならば、ここをかつてのレジャーランドのように再興したい。
しかし、後藤社長は現在85歳(2015年現在)。
私よりもお元気そうだったが、やれることには限界がある。
「夢も一緒に買ってくれる人が現れるまで、遊具は撤去しない。」
後藤社長の言葉が、深く胸に残った。
−完−