S診療所 4/4
大正から戦時中までの書籍類が、そのままの状態で放置されていた。
診療日記もあり「死亡さる」の生々しい記述も見受けられる。
診療所というと小規模なイメージがあるが、当時のこの地区では総合病院として機能していたようだ。
廃業時期は、戦時中と推定。「健全ナル国民ノ育成ハ・・・」の張り紙もあった。
それにしても、残留物は凄いの一言に尽きる。
創刊号の文芸春秋、朝日新聞社発行の「皇国の護り」、「世界一周すごろく」等の書籍類、そして薬品類や注射アンプルの数々。
廃業から推定60年以上が経過しており、木造の建物が現存していること自体が、奇跡的だ。
さすがに階段部分等の崩壊が激しく、限界は確実に近づいている。
ある程度崩壊したからこそ、私が中に入れるようになった訳でもあるのだが。
私が今までに訪ねた廃墟の中でも、この廃墟に限っては、なるべくそっとしておきたいと思った。
残留物の移動等、わずかな人為的な行為でも、ここには似合わないだろうから。
そんな訳で、今回に限り外観の画像も非公開とさせていただいた。
結局、この診療所1軒だけで丸一日を過ごしてしまったが、充実感に溢れていた。