地底の温泉旅館 4/4
浴場は、この地下施設の中で唯一、光が差し込む場所でもあった。
地下にある浴場、地下にある洗い場・・・シュールすぎる。
地下壕跡の狭い空間だけに、区切ったり掘り広げるなどの工夫が凝らされている。
この広い部屋は、宴会場だったようだ。
そう、ここはかつての温泉旅館の跡だった。
地下壕の一つをメインの通路にし、分岐する壕を仕切って客室や宴会場にしていた。
なかなか工夫されているが、そこまでして地下に造る必要があったのかと・・・
木製のテーブルは朽ち果て、使われなくなってから相当な年月が経過しているようだ。
施設内で最も深い地下20メートル地点には、誇らしげな表示があった。
先ほどの大浴場(中浴場?)のほかに、家族風呂もあったようだ。
タイルがいい感じ。
こちらは地上の日が射し込まないので、より地下感を味わうことができそうだ。
シングルルーム?地下で一人で寝るのは少し心細い気もするが・・・
調理場もあった。ちゃんと調理し立ての料理を味わうことができたようだ。
旅館らしく、バス会社との協定も結んでいたようだ。
奥に進むと、宴会に浸かったであろうビール瓶や、使わなくなった調理器具等が放置されていた。
さらに奥に行くと、旅館スペースから地下壕へと繋がっていた。
放置されていた自転車は、完全に朽ち果てていた。
壁についた跡を見ると、かつては水没していたように見える。
何らかの事情で水が抜けて、自転車が現れたのだろう。
地下壕跡に造られた温泉旅館の廃墟というのは、自分としても初めてのパターンで、全国的にみても珍しいだろう。
廃墟に行くつもりじゃなかった。にも関わらず、思いがけず珍しい廃墟に遭遇することができた。
廃墟との出会いはどこに転がっているか分からないし、面白い廃墟がまだまだ日本のどこかに眠っていることを再認識させられた。
それにしても、温泉旅館で宴会して酔っぱらって館内を歩いていたら地下で遭難してしまうというのは、何とも恐ろしい話だと思った。
魅惑の廃墟のページへもどる