さよなら、トーヨーボール 〜後編〜







上層階へと進む。
至る所に落書きがあり、荒れている。



完全に用を満たさなくなったレーンに、ピンとボールが転がっていた。



ガラスの無くなった窓から、西日が差し込む。
どうやら、雨は上がったらしい。



女子トイレの窓から、外をのぞく。
廃墟であっても、何だか女子トイレに入るのがはばかられる。






多くのピンとボールが眠っていた。



壁には多くの落書き、床にはペイントスプレーの缶が大量に転がる。



純金風呂で有名なホテル廃墟のチラシが落ちていた。
裏は、ここトーヨーボールの宣伝だった。
伊豆とは遠くは離れているが、一族企業だからだろう。



屋上へ続く階段。
しかし、ここの階段は手すりが無く暗いので、危ない。
何かにつまずいたり踏んだりしてバランスを崩さないように用心しないといけない。



外に出た。入る時に会った5〜6人組も、まだ1階をウロウロしていた。
今回も特に会話はなく、自然にやり過ごした。
ここ数年、大型物件が次々と姿を消している。
山梨の小曲園にはじまり、和歌山の宇宙回転温泉、湯川廃墟、愛知のふきぬき観光ホテル、岐阜の栃洞鉱山・・・
そして、このトーヨーボールも、ついに取り壊されるのかと思うと、寂しくもなる。
廃墟が廃墟である時間は限られてるし、いい具合に熟成された状態は、さらに短い。

廃墟は熟成されていないと面白くないし、壊れすぎていても興味が湧かない。
自然熟成と人工熟成の違いもある。そういったバランスが、実に微妙なのだ。
絶妙なバランスがとれていて、規模も大きい物件が有名になり、その結果、
人工的な破壊が進んだり、騒ぎを起こして取り壊しに至るケースが多い。

そんなことも考えながら、悔いを残さぬようしっかりと光景を心に焼き付けて、現場を後にした。