渡○毛織


繊維産業が盛んな愛知・岐阜の尾州地区。
年々外国産に押され、また、日本のメーカーも海外に工場を建設するようになり、産業規模は縮小の一途を辿っている。
このあたりは、戦前・戦後からの個人経営による古い工場が多い。
大手工場の廃業が相次ぐ昨今、個人経営の町工場を取り巻く経営環境は、非常に厳しい。
後継者不足も深刻で、高齢者が細々と営み、死去と共に廃業するケースも珍しくない。
ここも、そうした理由からなのか、真相は分からないが、10年以上前に廃業したようだ。
工場は既に取り壊されたらしく、空き地が広がっていた。
事務所兼居宅に、お邪魔した。




建物の周りには、小竹が生い茂っている。



内部は、風雨によってかなり侵食されて壁が落ちてしまっている。
真ん中に写っているのは、床を突き抜けて生えている一本の竹。



崩れ落ちた内壁と荷物がごっちゃになっていた。



この時代を感じさせる窓の形状が、とても気に入った。



部屋の片隅にはショーケースも置かれていたが、今となっては用途が分からない。



薬入れが、年代を感じさせる。



引き出しに貼られたシールも、いい味を出していた。



次の部屋に進む。



こちらの部屋には机が並び、帳簿類が多数散乱している。
どうやら、この部屋は事務所だったようだ。



事務所には、木製の大きな金庫があった。



人形があると、つい撮りたくなってしまう。



愛知県民は、時代に関係なくドラ党と相場が決まっている。



一部、建物の崩壊が進んでいて、年季を感じさせる建物だった。
ただ、廃墟化して、それほどの年数は経っていないようだ。
雨漏りしても、壁に穴が開いても、家が傾いていても、人が住んでいるケースが多々ある。
特に高齢者の独居の場合、完全に「廃墟」に見えても、未だ暮らしている場合がある。
ここも、壁が崩れたり天井が抜け落ちてたりするまで、どうやら人が住んでいたらしい。
工場は随分前に廃業しているが、数年前まで住んでいたものと推測される。
数年前に、何があって完全に廃墟になったのか、想像するしかないが、あまり良い内容は考えられない。
少し神妙な気持ちになって、この廃墟を後にした。