藤原(白石)鉱山一部解体
「白亜の迷宮」の異名で知られる藤原(白石)鉱山。
(今回解体された施設を含む全施設については、特集!藤原鉱山を参照)
木造の建屋内部が石灰で真っ白になっている貯蔵庫は人気が高く、日本で1、2を争う人気の廃墟になっていた。
その人気がピークに達していた2007年頃には、廃墟マニアのみならず、全国から多くの人が訪れるスポットになっていた。
特にコスプレ撮影する人たちに人気が高く、ある晴れた休日には、廃墟マニア5組15人、コスプレ10組50〜60人、モデル撮影のオヤジ集団10人ほどが一堂に会することもあった。
そんな時には、人気の建物の前では順番待ちの列が出来ていて、数組が並んでいた。
また、事務所だった建物はコスプレする女の子の着替え場所にされていて、入るのを止められたことがあった。
そんな、とても廃墟とは思えない人気レジャー施設だったが、2009年に発生した放火事件により、事情は一変する。
深夜に発生した不審火により、事務所が全焼した。
以前からこの廃墟は不良のたまり場になっていたり、盗品置き場に活用されていたり、金属泥棒も横行していて、犯罪の温床ともなっていた。
そんな中で起きた放火事件。
もしも事務所ではなく、風乾施設に放火されていたら・・・
この工場は水を含んだ石灰を自然乾燥させるため、空気が乾燥して風の流れがある地形を選んで建設された。
施設の殆どが木造で、しかも密集している。
稼動している当時から、防火は最大の懸念事項だった。
廃墟化した今、もしも火災が発生したら、山を焼き尽くすような大火に発展する可能性が極めて高い。
そして、工場のする裏手には集落があり、民家が密集している。
実は今回の事務所の火災でも、この集落への延焼危険が指摘されていた。
大正時代の遺構が残る貴重な産業遺産でもあった廃墟だったが、安全には変えられない。
廃墟取り壊しへの機運が高まっていった。
放火事件以降は侵入できないように防護壁を建設したうえで機械警備を導入。
地元へ駐在警備を委託し、侵入者は発見次第有無を言わさず警察へ引き渡し、立件・起訴するという徹底した警備体制がとられた。
こうした流れの中、2012年秋、ついに一部施設が解体されることとなった。
解体中との情報がもたらされたため早速現地に向かうと、貯蔵庫が8割方解体されていた。
つい先日までそこにあった廃墟が、今まさに解体されつつある。
廃墟が取り壊されている最中にわざわざ見に来るというのも、おかしな話だ。
10年間見続けてきた光景が思い出になる瞬間を、見届けたかった。
こうした解体途中の姿は、100年間に及ぶ白石鉱山の歴史の中で、たった1日間しか見られなかった光景だ。
廃墟になって40年以上を経て、ついに更地になる時がきた。
廃墟が廃墟のままであるというのは本来好ましい状態ではなく、安全面からいっても解体されて更地になるのが正しい姿だ。
来るべき時が来ただけなのだが、その間があまりにも長かったため、いつまでもそのまま在り続けてくれるものだと錯覚していた。
それだけに、廃墟が解体されるという当たり前のことにショックを受ける。
上から見た様子。今回解体されているのは、貯蔵庫と風乾棟のみ。
象徴的な部分は解体されたが、全体から見ればほんの一部に過ぎない。
廃墟は解体されるにしてもしないにしても、自然倒壊等によっていずれは消滅する。
そうした運命によって消滅してゆくのもまた、廃墟というもの。
整備された廃墟を産業遺産と言ったりもするが、月日に自然と流されてゆく廃墟の姿を見続けるのも、廃墟趣味の醍醐味だろう。
外から見た様子。随分とすっきりとした。
これで、火災のリスクは低減できそうだ。
解体作業に用いられていた重機。真っ白いアームが生々しい。
白石を象徴する貯蔵庫は解体されたが、まだまだ多くの施設が現存している。
決して終わった訳ではなく、生まれ変わろうとしている。
この廃墟が今後どのように変わってゆくのか、まだまだ観察のしがいがありそうだ。
(この施設へは、立ち入らないことを強く推奨します。奈良県にある遊園地廃墟と並んで、日本の2大ハイリスク廃墟です。)
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