さよなら、トーヨーボール 〜前編〜


「あのトーヨーボールが取り壊される」との情報を受け、すぐに現地へと赴いた。
幸いまだ工事は始まっておらず、最後の探索をすることができた。




当日は、小雨が降っていた。
この場所には、いつも何台かの駐車車両があったが、柵で覆われていた。



柵には、管理者の苗字と携帯番号だけ書かれた張り紙が。
これだけの物件で個人所有というのも考えにくく、どうも怪しい感じがする。
そのスジの方の所有になったのだろうか・・・



とりあえず、正面の柵以外に外観は何の変化も無い。
近々取り壊しが始まると今日がラストチャンスになるので、内部も見ることにした。
もちろん、こんな出入り口から堂々と入ったりはしない。
作業着の下にはネクタイを締め、ヘルメットをかぶり裏口から入る。



そして、駐車場から階段を上がろうとした時、上から人の声が!
数人で喋りながら階段を下りてくる。
真っ暗で見えないが、話し方からみて管理人じゃなさそうだ。
こっちは一人だが、この格好だし大丈夫だろうと思い、待ち構える。
お互い無言でやり過ごし、階段を上ってゆく。



思わず「ただいま!」と言いそうになる。
落書きにしては、なかなかシュールで味がある・・・



ここは1階だが、随所で雨が洩っている。
雨水が複数のフロアーを抜けて1階まで達するというのは、それだけ建物の老朽化が進んでいるということ。
建物自体は鉄筋とはいえ、レーン付近は木製。床に気をつけて歩く。



この物件は、とにかく落書きが多い。
これは、目玉のオヤジなのか?
右端のガイコツみたいなのは、ホラーなのかギャグなのか・・・



寸分違わぬ落書きが何箇所にもある。
わざわざマスキングを作り、持参しているようだ。
廃墟内という人目につかない場所への落書きに、なぜそこまで熱意がかけられるのだろうか。






チェーン店の案内冊子。
全国展開されている各店が載っていて、興味深い。



落ちていた表彰状。発行者は、やはりあの人だ。
ここの経営者も同じ苗字。一族企業ぶりがうかがえる。



さよなら、トーヨーボール 〜後編〜