東日本大震災

福島県相馬郡浪江町 2013年5月4日









ゲートが設置されているのは、大きな道だけじゃない。



どんなに小さなあぜ道であっても、確実に封鎖されている。



立入が規制される区域を結ぶ鉄道も、運休が続いている。



ホームから溢れた草が線路にまで侵食していた。



立入が規制されている区域との境界付近に、牧場があった。



殺処分を求められているようだ。



手塩をかけて育ててきた牛を殺させないように、切実さが伝わってくる。



この牛たちの運命は、どうなってしまうのだろうか。
牛たちはち、何も悪いことをしていない。
人間の事情だけで、命を翻弄されている。



震災後、原発事故を受けて、風評被害も発生している。
放射線は目に見えないから怖いのだが、ちゃんと意味を理解すれば、危険を安全の境界線を自分で引けるようになる。
もっとも危険でたちが悪いのが、ネットで拾ってきた出典の分からない情報や、間違った根拠をもとに、他人の不安を煽る言動だ。
放射線を発生させるのが放射性物質で、それぞれの単位はシーベルトやベクレルで表わされる。
風評被害を「風評じゃない」などと言い張る人に限って、放射線や放射性物質について何の知識も無いことが多い。
知りもしないでよく人にあれこれ言えるものだと、ある意味関心してしまう。
風評被害に対応するため、現在、主に福島県産の農産物や水産物を中心に、厳密な検査が行われている。
合格基準について言えば、世界で最も厳しい基準をクリアしなければ、流通ルートに乗ることは無い。
どのくらい厳しいのかといえば、自然界に存在する放射線量でもアウトになるくらい厳しい。
いわば常識外れとも言える、低すぎる数値が設定されている。

とはいえ、他の産地のものに比べ、少しでも放射線量が高いと気になる気持ちも理解できる。
ただ、一般に流通している以上、それを食べたところで「ラドン温泉に1回入ること」以上に被爆することはない。
それでも、「全量検査しているとはいえ、検査で規格外になったものがコッソリ流通に紛れ込んでいるのではないか」という人もいるが、これは元も子もない議論だ。
だって、検査を信用できないとなると、残留農薬や遺伝子組み換え、原産地、添加物等についても信用できなくなり、結果として自給自足するしか方法が無い。
自給自足するにしたって、肥料だって偽装表示の可能性があるし、水道水も信用できないし、雨水や川の水も汚染されている可能性がある。
人を全く信用せずに生きていくことなど、不可能ということだ。

風評被害を撒き散らす人はごくごく少数だと思うが、それを真に受ける人は、一定数いる。
でもその前に、正しい知識を身に付け、自分の頭でしっかりと考えて、自ら判断を下して欲しい。
正しく理解し考えることこそが、遠方に住んでいる我々が身近にできる復興支援だと思う。



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